突発性難聴治療記 戦う?お耳さま、私の場合

2018年2月に発症。治療法が確立されていない突発性難聴。迷ってばかりの治療記です。

【発症2年5ヶ月目】突発性難聴(感音難聴)治療薬に関する臨床試験の、日本国内の現況

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 前回の続きです。

喜ばしいことに、感音難聴に対して、治療薬の開発が世界的に進みつつあり、数年前とは状況が変わってきていることを知りました。

現在、突発性難聴では、確立された有効な治療法はありませんが、一般的に行われている治療として、

  • ステロイドー内服治療、点滴治療、鼓室内投与
  • 循環改善薬・血管拡張薬
  • ビタミン剤
  • 高圧酸素療法

などがあげられます。

突発性難聴ステロイド治療の割合

私は、入院してのステロイド点滴➕高気圧酸素治療を受けましたが、鼓室内投与は、探したけれど病院を見つけられないという状況でした。

日本で2014年度から2016年度に行われた「難治性聴覚障害に関する調査研究班」の調査では、突発性難聴と診断された92%の人にステロイドの治療が行われていました。ステロイド投与のみの人は66%で、鼓室内投与は重症度の高い患者さんほど割合が高くなっていて、26%の人が受けています。

臨床情報調査票を用いた突発性難聴疫学調査~治療内容についての検討 ○鬼頭良輔,西尾信哉,宇佐美真一、信州大学 医学部 耳鼻咽喉科⬇️より表を抜粋します。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology/59/5/59_521/_pdf/-char/ja

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ステロイド投与の有無について、全身投与・鼓室内投与の有無のすべてに記載のあった 1804 例を対象に検討したところ、92% でなんらかのステロイド投与が行われている結果であった。
ステロイド全身投与された症例のうち、入院で治療を行った記載がある症例は1386 例、 外来治療の記載がある症例は683 例で、この両群の重症度について検討すると、入院で治療を行った症例のうち Grade3 以上の重症例の割合が 978/1386(70.6%)であったのに対し、外来治療が選択されていた群では285/683(41.7%)となっており、重症例ほど入院での治療が行われていた。両群の治療効果を検討したが、有意差は認めなかった。
ステロイド全身投与に鼓室内投与を併用された症例は 293 症例で、うち初期治療で鼓室内投与を行った症例が 34 例、2次治療(以下サルベージ)で投与された症例が 259 症例と、現状ではサルベージでの投与が圧倒的に多い結果であった。
ステロイド全身投与を行わず、鼓室内投与のみを実施した症例は 190 症例で、この群の重症度は、Grade3 以上の重症例が 75.3%(143/190)と比較的重症例が多い結果であった。

入院治療と外来治療、両群の治療効果を検討したが、有意差は認めなかった、という一文は興味深いですね。軽症でも重症でも入院してもしなくても、数字だけで見ると治療効果に差はないということでしょうか。突発性難聴が完治する人の割合は約1/3、完治はしないものの改善が見られる人が全体の1/3で、残りの1/3の人では治療の効果がみられないといわれています。短期間で回復した人の中には、自然治癒の方もいらっしゃるでしょう。

 

ステロイド治療にプラスして行われる治療内容は、病院により異なりますので、自分でしたい治療法を選んで病院を調べるしかないのですが、これがなかなかひと苦労です。

[医師監修・作成]突発性難聴の治療:ステロイドなどの治療法、治療期間など | MEDLEY(メドレー)

 

一般的な治療をしても効果が出ない場合、次の治療へ進みたいですが、検索しても突発性難聴の治療法は出て来ません。

見つけられないだけで、他にあるのでは❓と焦りと絶望の時間が過ぎて行きます。そこで、突発性難聴(感音難聴)治療薬の臨床試験をされていたら、もしかして聞こえるようになるかも❓試してみたい、という気持ちになりますよね。

臨床試験の日本国内の状況はどうなっているのでしょう❓

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耳科領域における再生医療最前線 感音難聴に対する再生医療開発の現況と今後の展開⬇️京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 中川 隆之

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/122/10/122_1285/_pdf

知りたかった情報です。抜粋します⬇️

感音難聴治療薬に関する臨床試験の本邦の現況

国内での臨床研究を取り巻く環境は,近年大きく変化しており,積極的な予算配分がなされる一方で,特に治療的介入を行う臨床研究に関する規制は厳格化されており,治験実施と同等の準備,体制が求められている.ただし,特別に本邦の規制が厳しいわけではなく,欧米と同様の基準になったと考える方が妥当である.
国内で行われる臨床研究や治験の多くは,UMIN臨床試験登録システム(UMIN―CTR : https ://www.umin.ac.jp/ctr/ index―j.htm)に登録されている.政府系研究費で行う臨床試験では,登録が義務化されている.UMIN―CTR では,これまでに行われてきた,あるいは,現在進行中の臨床研究を検索することができる.
難聴に対する介入試験を検索すると50件がヒットし,この中で感音難聴(突発性難聴,急性高度難聴を含む)を対象疾患とする 薬物治療(健康食品含む)に関する臨床研究は,12件認められる(表1).2019年6月時点で,試験終了7件, 募集中3件,開始前2件の段階にある.対象疾患は,11 件が突発性難聴を含む急性感音難聴であった.4件が国 からの研究費で実施されており,1件のみ企業からの資金で臨床試験が計画されている.7件は,自己調達,あるいは研究資金が明らかでない.投与薬物の種類は,漢方薬1件,ステロイド5件,インスリン様細胞増殖因子 1(IGF1)2件,バトロキソビン1件,エダラボン1 件,アミドトリゾアート(水溶性ヨード性造影剤)1 件,健康食品1件であり,7件が局所投与,5件が全身投与を投与方法としていた.作用機序としては,内耳細胞,主として有毛細胞の保護効果を期待する治療法であり,内耳再生誘導を薬効とする治療法は含まれていない.
ステロイド鼓室内投与に関連する臨床研究が4件登録されており,急性感音難聴診療の手引き,あるいはガイドラインへの貢献が期待される.新規化合物に関する試験はなく,既存薬物のリポジショニング(他疾患,検査などで既承認である薬物の適応拡大を企図した研究) が5件,既承認薬の有効性,安全性の再検討が1件である.

臨床試験登録システムUMIN Clinical Trials Registryを見れば、これまでに行われてきた,あるいは,現在進行中の臨床研究を検索することができます。政府系研究費で行う臨床試験では,登録が義務化されているので、自分で調べることが出来ます。

2020年7月時点で検索ワードを突発性難聴にして出てきたのは、21件でした。そのうち7件は終了しています。

下の表は拡大しても文字がボヤけてしまいますので、良かったら、ご自分でフリーワード検索➡️臨床試験登録

してみて下さい。右端の閲覧から更に詳細を見ることが出来ます。

UMIN―CTR(臨床試験登録システムUMIN Clinical Trials Registry)に登録されている感音難聴薬物治療に関連する臨床試験⬇️

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発症当時、病院を探すのが本当に大変だったので‥、このような一覧で見られるとは‥(´;Д;`)

良い臨床試験を見つけて、タイミングよく参加出来て、効果が出ると何よりですね。

開始前や一般募集中、試験終了のものもあります。お住まいの近くの病院で受けられるのが、1番良いですよね。

私が突発性難聴を発症して間もなく、ネット検索で見つけ、試したくて京都大学病院に行ってみたものの、やっていません、と言われ撃沈したのは

インスリン様細胞増殖因子 1(IGF1)」

臨床試験(フェーズ2)になるようです。私が行った時には、試験はもう終了しています。宮崎大学のアミドトリゾアートは、現在は終了していますが、私はちょうど試験期間に入れたんですね。

 

現在日本国内の状況は、新規化合物に関する試験はなく,既存薬物が使えるのでは?という調査のみです。
残念ながら、日本国内では現在、内耳再生を誘導するお薬の検討はありません。

新型コロナウィルスの治療薬も、今あるお薬で効果が出るか試験されていますが、突発性難聴についても、日本国内では概ね同じ状況のようです。一から創薬となると、時間と開発費も膨大なものになるでしょうね‥。

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再生医療の一助になればと思い、時々寄付をしています⬇️

ご支援のお願い | iPS細胞研究基金 | 京都大学iPS細胞研究所 CiRA(サイラ)

臨床試験に参加したい場合は、臨床試験の安全性と、科学的妥当性、自分にとってのリスクと利点を理解して、家族にもよく相談して、お決めになって下さい。

私は、宮崎大学病院で、アミドトリゾアート療法の臨床試験に参加した時には、事前に電話で先生から、副作用の説明なども受けています。治したくて必死なので、臨床試験に参加しましたが、夫に相談しただけで、親には反対されることがわかっていますので、事後報告となっています( ー  ー ;)

 

次回に続きます。