突発性難聴治療記 戦う?お耳さま、私の場合

2018年2月に発症。治療法が確立されていない突発性難聴。迷ってばかりの治療記です。

【発症2年5ヶ月目】突発性難聴(感音難聴)に対する再生医療開発の現況と今後の展開

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FX-322について、Google検索していた時に、jstageで

「第120回日本耳鼻咽喉科学会総会シンポジウム」
耳科領域における再生医療最前線 感音難聴に対する再生医療開発の現況と今後の展開

中川 隆之
京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

という論文を見つけました。

急いで発表年月日を確認しますと、

 

2019年(・Д・)

 

です。これは、

新しいですよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼️‼️

突発性難聴」で検索しても、20年〜30年前の論文がザラに出て来ます。50年前、というのもありました。本当に研究が進んでいないんだなぁ、と落胆していましたが、数年前から状況が変わって来ているようです。

⬇️⬇️⬇️⬇️⬇️⬇️

耳科領域における再生医療最前線 感音難聴に対する再生医療開発の現況と今後の展開

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/122/10/122_1285/_pdf

読んでみますと、発症当時、喉から手がでるほど欲しかった情報がぎっしりと詰まっていました(・Д・)‼️

「現況と今後の展開」

です。現況も今後の展開も知りたかった❗️

何も知識がない所から、突発性難聴について調べ始めましたが、やはり限界がありますし、もしかしてこうなのかな❓と推測するしかありませんでした。

 

日本では何故こんなにも突発性難聴の研究が進まないのか❓諸外国に比べ、日本政府の創薬への補助金は格段に少ないと聞くし、研究費が足りないのか❓難聴は認知症の1番の危険因子なのに、治療薬に対して何故こんなに関心が薄いのか❓何故すぐ補聴器サイトに行きついてしまうのか‥( - 。 - ;などなど、

  • これまで感音難聴治療法開発は,癌や認知症と比べて,保健医療の分野で中心的な課題と位置づけられてはいなかった
  • これまでは,感音難聴創薬研究に十分な研究開発に資金が投じられていなかったという点も無視できない.特に,製薬業界の関心は低かった
  • 難聴は,世界保健機関の報告では人類の克服すべき健康上の課題の上位にランクされており、近年、認知症を加速する重要な因子としても注目され,難聴,特に感音難聴に対する社会的関心は高まっている.
  • 近年,感音難聴治療薬開発に関連する潮流は大きく変わりつつあり,感音難聴創薬研究は,産業的にも注目を集める領域になりつつある.

ということでした。疑問の答えがわかり、ガッテンしました。補聴器サイトに行き着くのは、治療薬、治療法が無いからですよね‥( ・ _ ・ ;

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⬇️論文から抜粋して行きます

耳科領域における再生医療最前線 感音難聴に対する再生医療開発の現況と今後の展開

難聴は,世界保健機関の報告では人類の克服すべき健康上の課題の上位にランクされており,近年,認知症を加速する重要な因子としても注目され,難聴,特に感音難聴に対する社会的関心は高まっている.現在,感音難聴に対する薬物療法は,極めて限られており,新規治療法の開発に対する期待が高まっている.この流れは,感音難聴に対する創薬研究にも認められ,アカデミア発のベンチャー企業の活発な活動や製薬業界の積極的な取り組みも始まっている.本稿では,急速に進展しつつある感音難聴治療薬開発の国内外の現況をまとめ,われわれが行っているインスリン様細胞増殖因子1を用いた急性感音難聴治療研究の進捗状況を概説する.また,内耳再生医療開発の観点から,世界的な感音難聴創薬研究, 特に臨床治験の現況について紹介し,今後の内耳有毛細胞再生による感音難聴治療に向けた研究の展開について考察する.

感音難聴治療に対する社会的関心の変化

われわれ耳鼻咽喉科医や実際に感音難聴に悩む患者さんら感音難聴治療の臨床の現場にいる人間にとっては, 新しい感音難聴治療法の開発は切実な問題といえる.一方,これまで感音難聴治療法開発は,癌や認知症と比べて,保健医療の分野で中心的な課題と位置づけられてはいなかった.われわれ耳鼻咽喉科医や聴覚研究者にも注目を集める研究成果を提示できていないという意味で, 責任の一端はあるかもしれない.これまでは,感音難聴創薬研究に十分な研究開発に資金が投じられていなかったという点も無視できない.特に,製薬業界の関心は低かったと感じられる.しかしながら,近年,感音難聴治療薬開発に関連する潮流は大きく変わりつつあり,感音難聴創薬研究は,産業的にも注目を集める領域になりつつある.
世界では,高齢化社会の進行に伴い,保健医療上の優先課題に変化がみられる.世界保健機関(WHO)は, 数年に1度 Global Burden of Disease というレポートを発表している.Burden of Disease は,疾病負荷と訳され,疾病により失われた生命や生活の質の総合計を示し,WHOや世界銀行など国際機関が保健政策の優先度を決める場合の指標としている.つまり,世界的な問題解決に向けた予算配分に大きな影響を与えるリポートといえる.疾病による死亡のみを指標とせず,障害により失われた健康的生活の程度を勘案している点が特徴的であり,致死的でない疾患の社会的影響を評価することができるとされている.障害損失年数(years lost due to disability)は,障害の程度や障害を有する期間が,どの程度余命の損失に相当するのかを定量化したものであり,感覚器疾患や精神疾患など致死的でない疾患の社会的影響を調べることに合目的とされている.2017年の報告1)では,加齢性およびその他要因による難聴(遺伝性難聴と伝音難聴以外による難聴)は,障害損失年数によ るランキングで,腰痛,片頭痛に次ぐ3位とされており, 感音難聴が解決すべき社会的な課題であることを物語っている.Global Burden of Disease における加齢および その他要因による難聴の障害損失年数のランクはこの20年間上昇傾向にあり,今後さらに感音難聴治療法や予防法の確立が世界的に求められることが予想される.製薬業界にとっても,感音難聴創薬研究は,無視できない,大きな市場ととらえられるようになりつつある.
2017年の Lancet に発表された認知症に関する論文で, 認知症の危険因子として最も影響のある因子が中年期 (45~65歳)における難聴の存在であることが報告された2).人々は,難聴に対して感音難聴創薬研究は,無視できない,大きな市場ととらえられるよ大きな恐れを抱いていないが,認知症に対しては生命の危機に匹敵する恐怖感を抱いているのか,この論文は,世界の人々の難聴に対する認識を大きく変えた.認知症になりたくなければ,難聴に真剣に取り組まなければならないという風潮が生まれ,難聴に対する治療的な取り組みに繋がっている.これら一連の社会的背景の変化に加え,感音難聴治療に関する近年の基礎的研究の進捗が,世界的な感音難聴治療 薬開発の潮流を生み出しているといえる.製薬業界は, この流れをビジネスチャンスととらえ,今後の開発ター ゲットの主要な項目に感音難聴を加える企業も現れている.

「人々は、難聴に対して大きな恐れを抱いていないが,認知症に対しては生命の危機に匹敵する恐怖感を抱いているのか,この論文は,世界の人々の難聴に対する認識を大きく変えた。」
ここはすごく印象的でした。皆、認知症はどんなものかある程度知っていますが、健聴な場合は、難聴の状態を想像するのが難しいので、仕方ないのかなと思います。ですが認知症側からでも、最終的に感音難聴のお薬開発に繋がるのであれば、認識が広がって良かったですよね。

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WHOのレポート「Global Burden of Disease(GBD、世界の疾病負担)」は、数年ごとに発表されるそうです。1990年にはじまり、近年では、2010年、2013年、2015年、2016年、2017年に発表されています。2020年は探してみたのですが、見つけられずで、今の所発表されて無いようです。2020年は、新型コロナウィルス(COVID-19)が猛威を奮っていて状況が変わっているので、発表出来ないのかもしれませんね。GBDってご存知でしたか❓こういった健康調査があることは、ニュースなどで何となく知っていましたが、読んでみると、想像をはるかに超えた、大規模で多方面から分析されている調査で、すごく驚きました❗️保健政策立案や保健介入における優先順位決定のなどの他、データは多岐にわたり利用されます。

⬇️2012年の日付けで見つけました。

世界の疾病負担研究(GBD 2010) ~世界の疾病構造の劇的な変化がはじめて明らかに~渋谷 健司(東京大学医学系研究科 国際保健政策学専攻分野 教授)⬇️

https://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20121214.pdf

抜粋します。

ワシントン大学東京大学クイーンズランド大学、ハーバード大学ジョンズ・ホプキンス大学、インペリアル・カレッジ、世界保健機関(WHO)の7つの機関の共同研究として 2007 年から始まった「世界の疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study、GBD 2010)」では、過去最大規模の健康調査でこれまでにない量・種類のデータを収集、包括的で多面的な新手法で分析し、このほど研究成果をまとめました。

医療の進歩や開発の進展によって、食糧不足の解消と死亡数の減少が進み、世界人口の大幅な高齢化がおこっている一方、精神疾患・慢性疼痛・負傷 などによる負担や肥満・運動不足などの危険因子を抱えながら、多くの人が生きていることがわかった。世界の人口の大半は早死しなくなったものの、皮肉なことに病気を抱えながら長生きするようになり、1990年以来、健康の世界動向は大きく変化していることが明らかになった。

⬇️2017年のGlobal Burden of Disease(GBD、世界の疾病負担)の高齢化に伴う疾病負荷の増加より

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日常生活での負担の中で、老人性難聴とアルツハイマー病は、

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となり、どちらも順位が上がっています。増加率では、老人性難聴28.4%、アルツハイマー病は58.1%で、1位と2位です。

2017年版、GBD世界の疾病負担の、日常の1位は腰痛、2位脳卒中、3位アルツハイマー病となっています。

我が国の疾病負担に基づく医薬品、医療機器及び医療技術の開発等の資源配分の確立のための研究,東京大学大学院 国際保健政策学教室助教 野村周平より表を抜粋します⬇️

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000511705.pdf
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日本国内の、高齢化に伴う疾病負荷の研究で、男女別に20年後の2040年の予測が出ています。老人性難聴も、アルツハイマー病も順位は上がり、アルツハイマー病に至っては、男女共に1位です。

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難聴は認知症の最大の原因になる!?「難聴の影響」も認知症の危険因子に 日本耳鼻咽頭科学会⬇️

http://www.jibika.or.jp/owned/hwel/news/001/

2017年の Lancet (世界五大医学雑誌)に発表された認知症に関する論文で, 難聴は認知症の最も大きな危険因子である」という指摘がされました。(ただし先天性難聴や一側性難聴はこの限りではありません、という補足があります。)他の片耳(一側性)難聴はその限りではない、という論文も読みましたが、私の記憶する能力は確実に落ちていますので、影響はやっぱりでは無いと思っています。

GBDで、世界でも日本国内でも感音難聴とアルツハイマー病の順位が上がり、感音難聴創薬研究は,無視できない,世界の潮流であり、大きな市場と認識されました。

老人性難聴と突発性難聴は発症時は全く違いますが、同じ感音難聴なので、このような潮流に該当して、ありがたやですね‥。大きな市場で、世界の潮流となっていますので、感音難聴のお薬開発が、先細りになったりはしないと思われます。ただ絶望し続けるだけで無く、治療出来る日が来るかも❓と思えるのは気持ちが全然違いますよね( ;∀;)

長くなってしまいましたので次回に続きます‥。